絵手紙ラボ・年賀状〜暑中見舞いまで。色々な道具で手書きを楽しもう!

筆の使い方と線の練習

絵手紙では、普段とは少し違う筆の持ち方・かき方で描いていきます。

1. 筆は根元までしっかり墨をつける

絵手紙では筆の根元までたっぷりと墨をつけます。根元まで墨を含ませていないと、何度も墨継ぎをしなくてはいけません。意図しない途中での墨継は、せっかくの線の勢いを弱めてしまうので防ぎましょう。 根元まで墨を含ませても、ティッシュで墨量を調節すれがにじみすぎません。また、墨の量はかき進めていくとちょうど良くなっていきます。

筆の根元までしっかりつける
筆の墨が不十分はNG

2. 筆のてっぺんを持つ

鉛筆やペンの持ち方、書道の時に習った持ち方は一旦忘れましょう。

この「てっぺん持ち」は最初はぎこちなく、思うようにかけませんがそこがポイントです。思うようにかけないので、集中して一生懸命かかざるを得ません。まずは「集中して線を書く」という感覚を身に付けましょう。手が震えでどう墨がつくかわからない‥この偶然性は楽しいものです。
自分一人の力ではなく、自然に「かかされている」、この感じを大切に。

また、「てっぺん持ち」ができるようになると、手から紙までの軸が長いので線に表情がつきやすいです。 ペンの持ち方では、少し慣れるとだいたい自分の思い通りにかけるようになってしまいます。でも、想い通りになるということは、自分の想像内・想定内で完結してしまい、つまらないです。そして、その先にあるのは技巧的な「上手さ」。絵手紙で大切にしている、自分だけの「ヘタ」を磨いた「個性」には繋がりません。

自分の創作意図に、意外性・偶然性が重なってはじめて、人を惹きつける絵手紙が出来上がります。

筆のてっぺんを軽く持つはOK
筆の中心を普段どおり持つはNG

3. 筆は垂直に立ててかく

筆は寝かせず、穂先2、3本だけ使うようにゆっくりかきます。線は彫り込むように、ゆっくりと。
目安は10cmを1分間で引く位のスピードです。
姿勢も背筋を伸ばし、腕と紙が水平になるように脇を広げ、ひじは上げましょう。この姿勢(懸腕直筆ーけんわんちょくひつ)は窮屈で、最初は1分間ももたないですが、できる範囲で続けてます。肘が下がっていると、手首だけでかくことになるのでのびのびとかけず小さくまとまってしまいます。
座って書くのが辛い時は立って書いてもOK。筆が紙まで一直線になりやすく、肩への負担も少ないです。
かき終えた時に筆先が曲がってないかチェック!
紙の上を滑らせて書いてしまっていると、筆先が曲がってしまいます。

筆を立て彫り込むように描く
筆を寝かせて書くのはNG
書いた後に穂先がまっすぐなのがGood
穂先が曲がってしまうのはNG

4. 半紙を使った基本の練習

では、さっそく線の練習をしましょう。繰り返しになりますが、絵手紙で書く線の速さの目安は1分間に10cmです。
これはかなりゆっくりです。左→右、上→下、右→左、下→上へ描それぞれ1分間測って感覚をつかみましょう。

左→右イメージ 上→下イメージ 右→左イメージ 下→上イメージ

次に右巻き、左巻きで渦巻きをかきます。時間は測らず、疲れる所まで。特に左巻きは慣れていないので、多めに練習しましょう。

右巻イメージ 左巻イメージ

これが基本の線の練習です。(余白の部分は墨色を見たり、彩色時の顔彩を確かめたりに使用しましょう。)

線の練習全体イメージ

ここまでかくと、筆に残っている墨量が適量になっています。 普段使わない右から左、下から上、左渦巻きを重点的に練習すると「苦手な角度・方向」がなくなります。
はがきに入る前の集中力を鍛えるために、この準備運動を取り入れてみましょう。直線と曲線がかければ、文字も絵もかけるはずです。「良い線」は量を書くと少しずつ見えてきます。

5. 楽しく練習しよう

どうせなら半紙が真っ黒になるくらいびっしり線の練習を。 これは仕上げると達成感があります。
ゆっくり書く基本ができるようになったら、細い線、太い線、墨の濃淡など、書くスピードや力の強弱を変えてみて、線のバリエーションを増やしていきましょう。

半紙で練習イメージ1 半紙で練習イメージ2

*「ゆっくり書く」が基本ですが、「ゆっくり書かなければならない」ということではありません。 どんどん色々な線を試しましょう。しかしながら、「基本なくして応用なし」もまた事実。基本の線の練習も必ず取り入れましょう。


線の練習には「漢碑」,「いろはうた」,「短歌」など、文字情報があればなんでもOK。絵手紙で有名な漢碑は「開通褒斜道刻石(かいつうほうやどうこくせき)」や「莱子候刻石(らいしこうこくせき)」。図書館の美術コーナーに大抵古典は置いています。お気に入りを一冊手元に置いて、一日一枚! 新聞で気になったフレーズ・気に入った漢字などをとにかく書いてい見るというのもおすすめです。

文字練習イメージ

先程「文字情報ならなんでもOK」と書きましたが、それは基本の「ゆっくり書く」の場合。線のバリエーションを出す練習には、とにかく、手当たり次第なんでも「墨」で描いてみましょう。特に、偉大な画家の作品の模写は、筆遣い、構図の勉強になります。全部でなくても、自分がかきたい所だけでOK。巨匠の作品は構図が計算されているので、部分でかいてもキマリやすいです。
*模写を絵手紙として送付する時は誰の作品か明記して送りましょう。

模写1 模写2

絵手紙には「人まねはしない」という原則がありますが、それは固定観念を捨てるため。
「ヘタでいい」は「ヘタのままでいい」ではありません。
先人の素晴らしい作品はたくさん模写して、自分の線を磨くとともに、筆使いなども勉強しましょう。