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モローとルオー展

展覧会

2013.10.02

「モローとルオー」を見に、パナソニック汐留ミュージアムに行ってきました。
ギュスターブ・モローは、自分が一番最初に好きになって、画集を買った画家です。
実物を見れると興奮気味に出かけました。
高校生当時は世紀末美術の陰鬱な感じが、社会に対しての反抗的な自分の気分と一致しており、 「ユピテルとセレメ」は携帯の待ち受けにしていました。
最晩年作とは驚きです。
モローは「世紀末の画家」という認識しかなかったのですが、印象派とかと時代がかぶっていると知って驚きました。宗教画が多かったのでもっと昔の人かと思っていました‥。

静寂。神秘性。美しさ。

モローの絵はその一瞬を切り取っていて、永遠性を感じます。
「モナリザ」と同質の空気です。

この神聖さはすごい。

「サロメ」、「オルフェウス」などの首だけだったり、毒殺の場面だったりの作品でも、グロさはなく本当に美しいです。
その非日常な残酷世界に引き込まれます。
それこそが「絵画」が「絵画」であるために必要なこと。
セザンヌのいう「堅牢で永続的なもの」と共通していますが、 時が止まっているという点で、空気感や躍動感、イキイキ感を求めていった印象派とは正反対です。

そして、モローは画家としても一流なのに、指導者・キュレーターとしても超一流。
モローの教えは「色彩の解放」と「美しい材質感」でした。
ルオーとの書簡のやり取りは泣けてきました。
お互い、思いやりに溢れています。
モローは労働階級のルオーが、画家を諦めないように、遺言でお金を残し、 自分の作品から少しでも学べるように、自分の美術館の館長に任命してルオーを導いています。
ギュスターブ・モロー美術館は、生前から画家自ら自宅を美術館に改装し、そのまま国に寄贈しています。
そんな画家は過去にはいませんでした。
モローとルオーの師弟関係はたった6年程です。
その6年で、ルオーの画家としての人生は決まりました。
本当に、人との出会いは運命ですよね。

モロー教室からはルオーの他にマティスも出ています。
最近傾倒してるマティス様の師もモローだったとは‥ほんとにすごいです。
あんなに作風が違うのに個性を見抜き、「色彩」についてしっかりアドバイスしています。
生徒を一人の芸術家として接する姿勢‥人格者ですね。

デッサン優位だった当時のアカデミーで、キャンバスへ直接下描きすることを認める、というモローの指導は批判にあったと思います。
でも、そんなことは気にせず、若い才能をしっかり引き出した。
アカデミックな路線から外れるとすぐ批判される中で、自分の背中を押してくれる存在は大きいです。

さてルオー。
マチエールがっつりの「キリスト」、「道化師」のイメージが強かったですが、初期の作品の技術力と構成力がすごいです。
特にパンフレットにも載っている自画像の明暗表現はレベル高すぎです。
描いてないのに、周りの明暗とフォルムで表現しきっています。

後年のものは輪郭線をしっかり描いて平面性を強調しているので、静的で神秘性はモローに通じるものがありますが、黄色やオレンジなどモローよりも明るい色彩が多く使われているので、親しみと温かみを感じます。
モローのような厳格さ、完璧さはなくもっと自然です。
親しみが湧きます。

‥が、やっぱり私はモローが大好きだったみたいで、「ハムレット」、「トミュリスとキュロスまたはトミュリス女王」、「ユピテルとセレメ」行ったりきたりでした。
やっぱり好みなんですかね‥

モローとルオー -聖なるものの継承と変容-

2013年9月7日〜12月10日

パナソニック汐留ミュージアム

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