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デンマーク・デザイン展

展覧会レポート

2021.05.08

東北歴史博物館で開催されている「デンマーク・デザイン」展へ行ってきました。
「ホンモノ」を見るのは久しぶり。 この博物館は、コンクリートとガラスとを組み合わされており、とてもオシャレでキレイです。
北欧デザインといえば、私が学生時代の時に大流行!
青春時代を思い起こしながら観覧してきました。

【第1章 国際的評価を得た最初のデンマーク・デザイン】

デンマークデザインが確立される20世紀以前のデンマークの工芸は、王立磁器製作所(1775年設立)、現在のロイヤルコペンハーゲンの「ブルーフルーテッド」。
どんな形の器にも適したブルーフルーテッドは工房にとって最初のパターンとなり、デコレーション番号『No.1』がつけられ、全てのブルーフルーテッドの製品の裏側に書き込まれています。



*ロイヤルコペンハーゲンHPより
デンマーク的だと思われてますが、中国に由来しています。

1885年、美術監督に建築家で画家のアーノル・クローウが就任。彼は豪華で品格のあるデザインで、王立磁器製作所を国内外で有名にしました。日本から影響を受けた自然のモチーフをデンマーク的な表現に転換したポットや花瓶も作成されました。

【感想】
作品はとても日本的だと感じました。現在思い起こされる機能的な「北欧デザイン」以前の食器群。

【第2章 古典主義から機能主義へ】

1990年頃、画家のヨハン・ローゼは日本の美術工芸品を参考に古代風のシンプルな家具を設計し始めました。彼の家具は「使用法がその形態を決定する」という後のデンマーク・デザインの在り方を指し示していました。
ローゼの思想は、王立美術アカデミー建築学科家具専攻科の初代教授、コーオ・クリントに引き継がれました。

ローゼの教え
・古典古代から着想を得ること
・家具の使用法に着眼することによって、調和のとれた機能的な家具の作成が可能である

クリントは伝統を切り捨てず、むしろそれを発展の土台にすることを出発点とし、歴史的に重要な古い家具を細部まで弟子たちと計測しました。
彼らは、デザインとは、日常生活で使う道具に適切な形を与えることだと考えていました。

【感想】
デンマークデザイン界の巨匠、アーネ・ヤコプスンのテキスタイルが唐突に登場します。やはり素敵。
私が北欧デザインにハマっていた十数年前は確か、「アルネ・ヤコブセン」と呼んでいたのですが…現在は、「アーネ・ヤコプスン」なんですね。

【第3章 オーガニック・モダニズム : デンマーク・デザインの国際化】

1949年に美術工芸博物館で開催された家具製造業者組合展には、海外から大勢のジャーナリストが訪れ、とりわけアメリカ人の記者たちは、伝統と手仕事、機能主義に根ざしながらも、有機的な形態と調和した、新しいスカンジナビアスタイルを熱狂的な文体で綴りました。
(アメリカは工業化された消費文化の時代)
1950年〜70年は、ハンス・ヴィーイナ、フィン・ユール、アーネ・ヤコプスンらデンマーク・デザインの黄金期。
新しい時代のデザイナーにとってモダニズムとは必ずしも純粋に客観的である必要はなく、流麗なフォルムを与えることによって情感を表現できるものでした。
この「オーガニック・モダニズム」は、機能性を犠牲にすることなく、デザインに遊び心と人間的な温かみを付与しています。

【感想】
・ハンス・ヴィーイナ「ザ・チェア」「Yチェア」
・アーネ・ヤコプスン「エッグチェア」「アントチェア」
・ポウル・ヘニングスン「ペンダント・ランプ 〈PHシリーズ〉」
・ヴェアナ・パントン 「パントンチェア」
・カイ・ボイイスン 「玩具 〈サル〉」

の有名どころの実物を見ることができます。

◉個人的大好きデザイナー「バーナー・パントン」(ヴェアナ・パントン)
パントンは王立美術アカデミー建築学科→アーネ・ヤコプスン事務所という経歴の持ち主。
下の空間コーディネートからもわかりますが、パントンは奇抜でワクワク興奮するようなデザインを多く残しています。(機能性に情感を漂わせたデザインが主流の当時は残念ながら受け入れらなかったようです…)

今回の撮影OKスポット↓

また、新素材や異素材も積極的に採用しています。
木製家具が主流だった当時、プラスチックを用いて製作された「パントンチェア」は、世界で初めて作られた「完全一体型の椅子」。現在ではミッドセンチュリーを代表する名作となっています。
(素材は100%リサイクルが可能なポリプロピレンを使用)
私も何年か前に限定色として発売されていた紫のものを自宅で使用しています。
座り心地も悪くなく、置いてあるだけで気分が上がります。

ナナ・ディッツェルは、「ハンギング・エッグチェア」が有名だと思うのですが、展示されておらず残念。
また、撮影OKコーナーでは、デンマークのお部屋コーディネート例を撮影できます。

【第4章 ポストモダニズムと現代のデンマーク・デザイン】

【感想】
自転車やポスター等の展示があります。
ポスターはマティスの切り絵を思わせるような、デザイン的でシャレてます。 最後に実際に座ることのできる椅子も何点かあり。

【全体感想】
東京の展覧会と比べると、作品数も少なめで少し物足りないかな…?
(’観覧動員数を考えてたら、しょうがないですが)
でも、東北の一都市でこのようなデザイン展を開催してもらえるのはとてもありがたいです。
また、展示室内にカメラ可否の表記を探せず、撮影OKかと思っていました。 (一部の展示は撮影OK)

何年も前に東京で開催されていたバーナー・パントン展では、パントン空間に実際に入れたので…
参考:ヴェルナー・パントン展URL ≫

最近の展覧会は、SNSの拡散で盛り上げることを前提に、撮影ポイント等を作っている場合が多いので、解禁すればいいのになぁと個人的には思いました。

●展示品・デザイナー名一覧

【第1章 国際的評価を得た最初のデンマーク・デザイン】
ゴスタウ・フリードリク・ヘチ
アーノル・クローウ
スセデ・C・ ホルデン
ハンス・ピーダ・コフォーズ
カール・フレズレク・リースベア
アメーリェ・ スコウ
ピートロ・クローン
エフィーイ・ヒーヤマン=リンデンクローネ
インゲボー・スクリュズストロプ

【第2章 古典主義から機能主義へ】
コーオ・クリント
モーウンス・コク
ギーオウ・イェンスン
ヨハン・ローゼ
アーノ・マリノウスキ
カイ・ニルスン
カール・ヘーリャ
アーネ・ヤコプスン

【第3章 オーガニック・モダニズム ーデンマーク・デザインの国際化】
ハンス・ヴィーイナ
バアウ・モーウンスン
アーネ・ヤコプスン
フィン・ユール
ヴィルヘルム・ロンストラム
リカート・モーデンスン
ローバト・ヤコプスン
ポウル・ケアホルム
ポウル・ヘニングスン
ヴェアナ・パントン
ナナ・ディツェル
ピーダ・ヴィト/ オーラ・ムルゴー=ニルスン
イェンス・ヨート
トーヴェ・キント=ラースン/イズヴァト・キント=ラースン
カーアン・クレメンスン/エベ・クレメンスン
イロム・ヴィゲルス
カイ・クレスチャンスン
アクトン・ビャアン
ヤコプ・イェンスン
イェンス・クヴィストゴー 
ヘニング・コべル
スヴェン・シューネ
ベント・スィヴェリーン
ピア・リュトケン
ミケール・バング
ゲアトルズ・ヴェーセゴー
グレーデ・マイア
ヘアバト・クレンケル
スィーグヴァード・バーナドット
/アクトン・ビャアン デンマーク
オーレ・キアク・クリスチャンスン
カイ・ボイイスン

■ポスター
アーネ・オンガマン
ヴィゴ・ヴァウンビュー
イプ・アントーニ・イェンスン
ポウル・セーロモンスン
ピア・ アーノルディ
ローバト・ヤコプスン
バアウ・モーウンスン

【第4章 ポストモダニズムと現代のデンマーク・デザイン】
イーレク・マウヌスン
ニルス・ヤアアン・ハウゲスン
オーレ・パルスビュー
ヴィヴィアンナ・トールン・ビーロヴ=ヒーベ
ウアスラ・モンク=ピーダス
オーレ・イェンスン
ハンス・サングレーン・ヤコプスン
コンプロト・ディサイン(ボーリス・ベルリーン/ポウル・クレスチャンスン)
カーアン・ケルゴー=ラースン
スィスィーリェ・マンス
キビースィ
イェンス・マーティン・スキプステズ

■ポスター
ヘンレク・クーベル
タル エア
ミケール・イェンスン
イドナ グループ (前:スカンディナビアン・デザインラボ)
ピーダ・ケーア・アナスン
マス・ベアウ デンマーク
ピア・アーノルディ
ギデ・カト
ディサインボーレーエズ
フィン・ニュゴー

■テキスタイル
ロナン&エルワン・ブルレック

デンマーク・デザイン
シンプルな暮らしが生んだ豊かなカタチ

東北歴史博物館
開催期間:2021年4月23日〜6月27日
観覧料 1,200円(一般当日)
展覧会URLはこちら»