展覧会レポート
2016.05.29
だいぶ過ぎてしまいましたが、(半年も!!)ピカソ展に行ったので、そのときのメモです。
ピカソ展 アートの冒険者 ピカソの素顔
(2015年10月31日ー12月23日/宮城県美術館)
【アルルカンをめぐって】
アルルカンとは道化師のこと。
ピカソはその作風で青の時代→バラ色の時代→キュビズムとよく分けて説明されます。
アルルカンはその中の「バラ色の時代」で、モチーフとしてよく登場しました。
■青の時代→物乞いなどの、貧しい人々への共感の眼差しを向けた作品が多い。痩せこけた老人や、視線の合わないカップル。
『ラ・ヴィ 人生 (1903年)』,『老いたギター弾き(1904年)』→悲壮感とがすごい!など。
■バラ色の時代→ピカソの画に色彩が戻ってきた時代。サーカスの人々を多く描く。
(普通なかんじ‥※個人的な意見です)
■キュビズム→複数視点、そのものが持つ心理的な側面も含めた実在感を再構成し、対象の本質に迫る。
原点は『アヴィニョンの娘たち(1907年)』。
■面分割をしていた初期キュビズム→総合的キュビズへ
代表作は『泣く女』,『ゲルニカ』など。
キュビズム時代のコラージュ、作品はどれも素晴らしいです。特にギターをモチーフにした作品が秀逸です。まさに天才。
『ヴュー・マルクの瓶・グラス・ギター・新聞(1913年)』,『三人の音楽家(1921年)』
さて、展覧会。
【1. アルルカンをめぐって】
・『貧しい食卓』‥視線が交わらない。人物たちの関係性が気になる、有名作品の一つ。
・『手を組んだアルルカン』‥チラシ・ポスター用紙になっているものです。アルルカンの特徴的な衣装柄である菱形は平面的な色面で表現。人物自体はさらっと黒線で描かれています。こういう表現の力の抜き差しが絶妙です。
●『ヴォラールのための連作集』‥超有名な画商ヴォラール。エッチング(銅版画)作品多し。オシャレで、ファンタジー作品も。
・『三人の役者』‥鏡を使った背景がオシャレ感を上げている。
・『仮面を付けた人物と女の顔の鳥』‥白く塗り残しているのか、グレー→白→グレーと描いているのか‥ペン書きのような細い線がオシャレ。
・『ローソクの下の少年と眠る女』‥布の塗り方が技巧炸裂。さすが、美しい‥。
・『闘牛』‥銅版だけ見せられても‥。刷ったものも展示して欲しかった‥
アンブロワーズ・ヴォラール(1866-1939)マネ、ドガ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、ルオーなどなど‥有名・無名の美術家たちを援助、時には個展も開催。
【2. キュビスト ピカソ】
・『グラスとカップ』‥直線で区切られた、私のような一般人にはブラックの作品とまだ見分けがつかない時代の初期キュビズム作品。ごめんなさい‥
グラス、カップはそれが持つ最も特徴的な一部分だけ描かれている。
直線との対比でグラス・カップの持つ曲線が際立ちます。一部分だけでも、特徴さえ捉えれば表現することができると証明してくれます。
・『女』、『女性の頭部(フランソワーズ)』‥岡本太郎を連想させる作品たちです。2人は交流もあったみたいですね。
【3. 旺盛な好奇心ーヴァロリスの陶芸】
1947年じゃら南仏のヴァロリスにて制作された、斬新な陶芸作品コーナーです。
(1960年代後半までに4000点近い作品を制作してるそうです!!)
ピカソの陶芸は初めて拝見しましたが、とっても素敵。
これぞ絵画と陶芸の融合、コラボレーション。さすが何をやっても超級のピカソ。
これでもかと才能を見せつけられます。
≪準備段階で刻みつけられた線は必ずしも全てのヶ所で化粧土による装飾と対応していない。(展示パネルより)≫
‥すごい‥フィーリングであそこまで持っていくってことなんですね‥
・『鋏と葡萄の房の静物、裏面に青と緑の花が描かれている楕円皿』‥筆致が素敵です。勢いそのまま。
・『優美な縁飾り付の楕円皿』‥闘牛モチーフ。皿のフチを客席に見立てて描かれています。
・『2つの人面のある大きな水差し』‥さわやかな色使い。ただの○でも、どこから描き始めるのか、太さの強弱、勢いの変化‥と、単純な形一つとっても、高い表現力に圧倒されます。
◎『5人の牧神に長方形皿』‥絵本のキャラクターのよう。ピカソには珍しく、子どもにも受けそうです。
牧神が5人いて、5つに面分割されているのですが、その分割バランスはもちろん、人物の大小、各エリアの背景、分割線の装飾など‥
単純そうに見えますが、この中には彼が今まで蓄積してきた美的センスが凝縮されています。これはスゴイ。
『ノートルダムの眺望ーシテ島』‥モノトーン+淡い水色。平面的な表現。陰鬱さがすごいです。単色で見るときれいな空の色である「水色」にこんな物悲しさを強調する効果があったとは‥
ピカソの有名何処はありませんでしたが、陶芸はとっても良い感じ。
ピカソ入門には向いていませんが、既に知っていて、ピカソについて細かい所まで知りたい、という人用の展覧会だと思いました。