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チューリッヒ美術館展

展覧会レポート

2014.12.06

「チューリッヒ美術館展」印象派からシュルレアリスムまでに行ってきました。

1 セガンティーニ

北イタリアの分割主義の画家です。「分割主義」とは純色を混ぜずに並置することで、光を科学的に探究した「点描」に対して、線状の筆触で内省的なものの表現を試みています。本日初自分は対面です。

2 モネ

日本人に大人気の印象派画家のモネ、彼と共に展覧会を行ったことのあるエドガー・ドガ(1点)とオーギュスト・ロダン(1点)の作品が置いてあります。
モネの作品は‥やはり他の展示物が視界に入ってしまうと、彼の印象の世界に浸れません‥
展示上仕方がないのでしょうが、モネの睡蓮好きの方にはぜひ、瀬戸内美術館をおすすめしたいと思います。
国会議事堂のシリーズ等は、小さい頃に衝撃を受けた記憶があります。
ただ、そこにその色がある。
一度その風景が見えてしまうと、もうそれにしか見えず、そのただ事ではないその表現力に囚われてしまいます。

ロダン『殉教の女』
これはボードレールの詩から影響を受けているそうです。
彼の彫刻のポージングのかっこよさといったら!!
ブロンズと地面との設置面は左ももから頭にかけてです。逆に言うと、それ以外は浮いています。
‥かっこよすぎる‥

3 ポスト印象派

ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルソーです。
ゴッホ『タチアオイ』
我々のゴッホのイメージとは違う、暗くて重厚な緻密な描写の植物絵です。
セザンヌ『サント=ヴィクトワール山』
セザンヌ作品は一点だけですが、相変わらず「絵」として堅牢、画布もばりばり残しています。
ゴーギャン『花と偶像のある静物画』
偶像が不気味です。偶像って、こういうスパイス的に使うのですね。

4 ホドラー

パラリズム(平行主義)という類似した形態の反復によって秩序や統一性、リズム感をもたらす原理を使用した、装飾的で流麗な作品を生み出した画家です。
あのカンディンスキーが絶賛した画家。
(自分の中で、カンディンスキーはロシアの天才でカリスマ的なイメージ。なにしろ抽象主義の創始者と言われていますからね!)

『真実、第二ヴァージョン』
‥これは‥‥宗教画?哲学画??
正面を見据え、両手を上げた1人の裸美人の周りに、奇妙なポーズで頭から黒い布を被り、女に背を向けた男が6人‥‥どう理解すれば‥?
左右対称の配置に加え、女の周りには適度な「間」と、外に向けられた男たちの「視線」があり、一層の主役感を醸し出しています。なんとも見る者をざわつかせ、印象的な絵です。
第二ヴァージョンということは、第一ヴァージョンもあるのでは‥?と思い、調べてみると、やはりありました。
『真実』では構図はほぼ同じですが、男は4人、黒布は頭から体にかけてほぼ覆われております。それが『真実Ⅱ』になると男たちが背を反らし布が破れ?肌露出が増えています。『真実』と比較すると、苦しんでいるようにも見えます。

『日没のレマン湖』
‥オシャレボーダーです。テキスタイルデザインでもいけそうです。
来年の1月12日までは西洋美術館で回顧展が開催中もやっています。

ホドラーは1890年頃から明晰さと力強さが増し、水平の構図や水面の反映が重要な要素になったといいます。
また、彼によると水平性は「死」を連想させるそうです。なるほど、たしかに垂直性には「動」のイメージがありますが、一方の水平は「静」ですね。大きな湖の水面が波も立てずただまっすぐなのを想像すると、、、時が止まった、変化のない‥→死のイメージ には結びつくかも。

*フェルディナント・ホドラー(1853ー1918)スイスの画家。世紀末・象徴主義の画家。
父、母、他の兄弟も皆、結核で亡くなってしまいます。それらの経験から常に「死」という存在を近くに感じていたようです。

5 ナビ派

ボナール、ヴァロットンです。
ボナール‥ごめんなさい、あまり印象に残ってないです‥

ヴァトッロン‥
三菱一号館美術館で最近まで展覧会をやっていたので、そこでファンになった人も多いのではないでしょうか。相変わらずのサスペンス感です。
『訪問』での黒(影)の使い方などは惚れ惚れします。
風景画もありましたが、やっぱり彼は「人間の複雑な(えげつない)心理模様を瞬間的に捉えて描き出す」ことに長けた画家だと思うので、風景では色面配色のセンスの良さは分かるのですが、なんかもったいない気がします。彼の作品はオシャレで洗練されています。

6 ムンク

北欧の画家らしく、『冬の夜』なんかの暗色の使い方が秀逸です。一方『造船所』なんかの明るいものは、なんか無理を感じます←※個人の感想です!

7 表現主義

ドイツの「ブリュッケ」と「青騎士」という派が中核です。
キルヒナー『小川の流れる森の風景』‥前出のホドラーに憧れていた画家です。色使いが奇抜で独特。
バルハラ『難民』‥木の彫刻。像なのに「動き」を感じます。これはすごい。
ベックマン『女優たち』‥どことなくピカソ的??太い輪郭線でがしがし描いて、画面の半分を白で構成。

8 ココシュカ

『モンタナの風景』‥デュフィ的。この画家は風景の方がいい!
人物はなんか湿っぽくて‥(個人の趣向による)

9 フォービズムとキュビズム

マティス、ヴラマンク、ブラック、ピカソ。
ピカソの『ギター、グラス、果物鉢』はオシャレ。

10 クレー

『深淵の道化師』『操り人形』『スーパーチェス』『狩人の木のもとで』の4点。
スーパーチェスは有名ですね。
デザインの平面構成の様。モノクロ+強い色彩は一気に現代的。

11 抽象絵画

カンディンスキー『黒い色班』、イッテン『出会い』、ジャコメッティ(彫刻家とは別人)『色彩のファンタジー』、モンドリアン『赤、青、黄のあるコンポジション』、レジェ『機械的要素』が出展。
カンディンスキー、イッテン、モンドリアンはバウハウスのマイスターです。
 *バウハウス‥1919年ドイツに設立された、美術と建築に関する総合的な教育を行った、伝説的な学校。
「抽象絵画」の誕生で、絵画は「見たものを表現する」ということから解放されます。
すごい革命です。

カンディンスキーは、「すごく頭のいい画家」というイメージ。
(なにしろ抽象主義の創始者ですからね!※2回目)
初期の堅実な風景、黒い中に浮かび上がる画風、木版、ポスター、そして抽象主義へ。
しかもどの作品も超・一流。
作品からは神経質で繊細、完璧主義な人そうだなぁと感じます。

12 シャガール

日本人が大好きなシャガール。穏やかでやさしいさに溢れています。
『婚礼の光』‥奥さんのベラが亡くなって翌年の作品。
幸せだった、でもそれは過去のことである‥と強く感情に訴えかけてきます。
「幸せ」モチーフが並んでいるのに、シャガールブルーによって、反対の「悲しさ」を感じさせます。
奥さんのこと大好きで、その死に一生懸命向き合おうとして、あの頃は楽しかったなぁとか思い出して‥というシャガールの気持ちがひしひしと伝わっていて、これは見ていてツライ。切ない。
『戦争』‥ピカソのゲルニカが直接的に戦争の悲惨さを凝縮して表現したのに対して、シャガールのものは物語的で子どもの絵本のよう。
白いヤギ?が戦いの象徴なのでしょうか。こういう伝え方もあるのですね。
『パリの上で』‥これは幸せいっぱい!という感じ。20年前の『婚礼の光』と比べると一目瞭然。この2点のチョイスはさすがです。
(2人目の妻と結婚した後の作品。ベラの死を昇華、というよりは新しい幸せに対する絵なのかな?)

13 シュルレアリスム

キリコ『塔』、エルンスト『都市の全景』、ミロ『絵画』、『体操する少女』、ダリ『バラの頭の女』、タンギー『明日』、マグリット『9月16日』が出展。
キリコは顔のないマネキンが有名ですが、その他の「既視感」(デジャヴ)を思い起こさせる絵も惹き付けられます。
ダリの絵が「え、なんで?(笑)」となってしまうのに対して、キリコのもの物悲しい気持ちを思い起こさせます。
この孤独感はなに‥?
このもやっとした感じ、寝ているときに見る夢にそっくり。
(記憶があやふやなのですが、シュルレアリスムって元々そういう意味でしたっけ‥?)
自分が知っていることが非現実的に混ざり合って体感する。そして、それを見ることが出来るのは、自分一人だけ。‥孤独ですね‥

ミロ相変わらずの独自の道をいきます。雰囲気絵画。(良い意味で)
マグリットは方向としてはキリコと一緒の気がするのですが、なんかキレイにまとめようとしてる気がしちゃいます。。すいません。

14 ジャコメッティ

胴体が細長い彫刻家です。意外と小さいです。
目に見えたものをどう形象化するか→どんどん小さくした→サイズを回復しようと高さを求めた→独自の細長いフォルムい到達、だそうです。(展示パネルより)
『ディエゴの大きな頭部』正面から見るとただの棒のように薄いのですが、横から見るとちゃんと顔になっています。(伝えられてるかな?)
これは、人間て、実際一方向から見えてるのはほんとにごく一部であって、その奥に広く深く個性が広がっている、ということですか?
それを「彫刻」で表現しちゃう所がすごい。
『矢内原伊作の肖像』油彩のスケッチ。これは細長彫刻の面影あります。
人間って、表面の肉とか骨とか除いて、本質だけ取り出そうとすると、確かにこういう形状になるのかも‥と思ってしまいます。
ただ単に、人と違ったことをやろうと、形の面白さだけ考えてこういうブロンズ作ってたと思っていました。ごめんなさい‥

副題にもあるように、印象派からシュルレアリスムまでバランスよく展示されている良展だと思いました。
一方、一人の画家に思い入れがあって、それだけを目当てにいくとがっかりするかもです。
チラシに大きくある画家でも、一人につき一作品とかもあり。注意です。
有名画家の作品は代表作も多く、1880年~1950年あたりのヨーロッパ美術を広く浅くを理解するにはぴったりです。

チューリッヒ美術館展ー印象派からシュルレアリスムまで

国立新美術館

2014年9月25日~12月15日

観覧料 1,600円(一般当日)

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