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没後70年 中村不折のすべて

美術館レポート

2014.01.27

「没後70年 中村不折のすべて」開催中の書道博物館へ行ってきました。
書道博物館は中村不折記念館と本館の2つから成り立っています。
昭和11年に洋画家・書家である中村不折が収集したコレクションを展示する為に自費創設しましたが、平成7年に台東区に寄贈されました。
本館では殷時代の甲骨文字、画像磚、青銅器、瓦当、墓誌、古代の墨‥などなど絵手紙人にはたまらない物々が展示されてます。

展示は本人の写真から吹き出しが出ていたり、(不折はイケメン笑)
番号がふってあったりして分かりやすかったです。
ここではあの絵手紙で有名な「開通褒谷道刻石」の復刻が購入できます。

『中村不折のすべて』レポート

***
  • 1階
  • 『龍眠帖』『遼東新報社長末永純一郎君之碑』
  • 『臨顔真卿裴将軍詩軸』(大型展示ケース)
  • 鉛筆画、水彩画、若い頃の油彩画、従軍記者時代の画
  • 2階
  • 明治の文豪たちと不折
  • 新聞挿絵
  • フランス留学時代(デッサン、油彩画、留学中に入手した資料)
  • 油彩画、日本画、書、雑誌表紙、その他
  • という構成で、余すところなく不折が堪能できます。

pick up
・『臨顔真卿裴将軍詩軸』
入るとまずは天井から吊るされたこの書があります。
迫力があり、単純にカッコイイ。
不折は「不折流」「六朝書」と呼ばれる独自の書体を確立しました。
(隷書と楷書のミックス?)

・『草書七言二句軸』
【文字の美しさ】
一つの文字、一本の線の中にも変化があります。
特に『一』。その変化が一番わかります。
【角度】
一字一字の文字の角度は右上がり。
文章のかたまりとしては前二行は右下へ流れ、最後の一行は左下に流しています。
‥この絶妙なバランスは脱帽です。
【大きさ】
一行目は後の二行の約二倍の大きさで書かれています。
並列ではなく文字、文章に書家自身が優劣をつけてくれているので、見る方は迷いません。
【視覚誘導】
新聞などで見慣れている明朝体や学校で習う毛筆では大抵縦画が太く、横画は書き初めの起筆と終筆を強調します。
しかしこの書では横画が太く力が入っており、印象的です。
かすれの段階変化も心地よく、自然な鑑賞ができます。

・新聞挿絵『欧行画報』『十二支帖』『不折写景』
不折の作品は単独で鑑賞できる「コマ絵」という分野の「木版画」。
構図も工夫されており、簡潔な線で的確に表現されています。

・『子規居士尺牘』『漱石居士書翰』
中村不折は交友関係も広く、正岡子規や夏目漱石からの手紙も展示してあり、それぞれ味があります。

やはり芸術家は生き方というか、人間性も重要ですね。
書、コマ絵、ブックデザインが素晴らしすぎて、油絵がどうしても普通っぽく思えてしまいます。

中村不折 年譜(1886~1943)

1866年(1歳)  東京で生まれる。
1870年(5歳)  維新の混乱を避け高遠(長野県)へ移住。
1884年(19歳) マラリア熱が原因で聴覚障害を得る。(ほとんど
          聴覚を失い、大きな声を出さなければ会話もできなかった)
1888年(23歳) 上京。画塾「不同舎」に入門、小山正太郎に師事。
1894年(29歳) 浅井忠の紹介で正岡子規と知り合う。
          「不折」の号を使用。
1895年(30歳) 正岡子規と共に日清戦争の従軍記者として中国へ。
          拓本を手に入れ、以降漢字に関連物の収集開始。
1896年(31歳) 朝日新聞社に入社し挿絵を担当。
1897年(32歳) 島崎藤村『若菜集』刊行。装幀、挿絵を担当。
         (ブックデザイン)
          俳句雑誌『ホトトギス』創刊。
          表紙デザインを度々手掛ける。
1901年(36歳) フランスへ留学。ラファエル・コランに師事。
          夜は書、日本画の修行を続けた。
          『欧行画報』(コマ絵)(1901~1905)
1902年(37歳) アカデミー・ジュリアンに転じ、ローランスに師事。
1904年(39歳) ロダンのアトリエ訪問。
1905年(40歳) 帰国。夏目漱石『吾輩は猫である』の挿絵をかく。
1907年(42歳) 代表作『建国剏業』(堅実な油絵)発表。
1908年(43歳) 『龍眠帖』刊行。(不折の「書」の処女作?)
1918年(53歳) 第9回健筆会展に『臨顔真卿裴将軍詩』出品。
1919年(54歳) 『楷書千字文』『行書千字文』『草書千字文』刊行。
          *千字文‥1000の異なった文字が使用された、子供  に漢字を教えるために用いられた漢文の長詩
  1922年(57歳) 森鴎外没、遺言により墓碑銘を揮毫。
          『森鴎外全集』刊行、題字揮毫。
1932年(67歳) 書道博物館建設着手
1934年(69歳) 『不折山人写生帖』『十二支帖』刊行。
1936年(71歳) 書道博物館開館
1942年(77歳) 第5回新文展に『眺望』(油絵)出品。
1943年(78歳) 脳溢血の為急死。

(書道博物館パンフレット、『画家・書家 中村不折』画集より抜粋)

没後70年 中村不折のすべて

書道博物館(台東区根岸2-10-4)
*ホテルだらけの真ん中にあります。

2013年12月17日~2014年3月23日

開館時間 9:30~16:30(入館は16時まで)

入館料 一般 500円

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