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近代への眼差し 印象派と世紀末美術

美術館レポート

2013.12.21

三菱一号館美術館の「近代への眼差し 印象派と世紀末美術」へ行ってきました。
世紀末~エコールドパリは憧れの時代。
ルドン、ロートレック寄りのレポートです。

美術館はとってもオシャレ!!

中庭には素敵なカフェ、ショップが。

1章 ミレーと印象派

ミレー、シスレー、ピサロ、ドガ、セザンヌ、モネなどの印象派の堂々たる作品で導入。
pick up
・『ミルク缶に水を注ぐ農婦』 ミレー
→「晩鐘」、「落ち穂拾い」で有名なミレーの作品。田舎風景はほっこりします。
・『りんごとテーブルクロス』 セザンヌ
→セザンヌは私が最も好きな画家の一人です。あの平面性を強調した 強い画面。りんごの「そこにある感」がすごいです。

2章 ルドンの「黒」

ルドン=目玉・気味の悪い生物たち、というイメージ。
その期待を裏切らず、想像力豊かな、首をかしげてしまうようなリトグラフが並んでいます。
それにしてもルドンの『ゴヤ頌』は題名も素敵です。

Ⅰ夢のなかで私は空に神秘の顔をみた
Ⅱ沼の花、悲しげな人間の顔
Ⅲ陰気な風景の中の狂人
Ⅳ胚芽のごとき存在もあった
Ⅴ奇妙な軽業師
Ⅵめざめた時、私はきびしく無情な横顔の叡智の女神を見た

‥ことばのチョイス、配置が洗練されています。(翻訳の関係もあるのかな?)

3章 トゥールーズ=ロートレックと仲間たち

『ムーラン・ルージュ』で有名なロートレック。
実はトゥールーズ=ロートレックで一つの姓。
(フルネームはアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック)
ロートレックについては、名家生まれ、眼鏡とハットをかぶった肖像写真、歓楽街入り浸り、洗練された作品‥それらから勝手に遊び人なイメージをつくっていました。
しかし実際は両親が不仲で、二回の骨折により足が不自由、それによる差別にも負けず制作し、最後はアブサン中毒と梅毒で36歳の若さで亡くなりました。
そんな中で、そんな彼だからこそ、繊細かつ大胆なポスターが生み出されていったのですね。

この時代のリトグラフは部分部分へのマチエールや複雑さも制限されてて、構成力と造形力が勝負です。
大胆な色面構成、計算し尽された省略。
効果的な斜め線の配置は画面をイキイキとさせ、描き込んでいないのに充実した画面へと導いています。

pick up
・『メイ・ミルトン』
→ピカソの「青の部屋」に登場した作品。
 恋人の『メイ・ベルフォール』と対になるようにデザインされています。
・『快楽の女王』
→この斜線、テーブル上の静物を省略、黄緑で存在感を薄めて、 そこに黒で文字を入れています。センスの良さが際立っています。
・『ニブ』『ラ・ルヴュ・ブランシュ』誌/『ラルティザン・モデルヌ』
→斜線が効いています。特に『ラルティザン・モデルヌ』は目線が右上から左を通りまた右下へ、心地よく誘導されます。
・『レスタンプ・オリジナル』第1次のための表紙/最終号の表紙
→『レスタンプ・オリジナル』とは作品に通し番号を導入した(今のエディションno.)画期的な版画集。ロダン、ルノワール、ゴーギャンなどの有名人の他にも、ナビ派(当時の新進気鋭)の画家にも発表のチャンスがありました。
その創刊号と最終号の表紙を手がけたのがロートレック。
一枚ものとしてはもちろん、表紙と裏表紙になる(真ん中で折られる)事を考え尽くされて構成されてます。

さすが、この偉大な版画集の始まりとトリを務めるにふさわしいと思わせる出来です。

4章 レスタンプ・オリジナル

レスタンプ・オリジナルで発表された作品たち‥
ゴーギャンやロダンの版画作品があります。

5章 版画家ヴァロットン

モノクロの切り絵のようなヴァロトンの作品です。
日本の版画に影響を受けていると言われており、確かに前後の遠近感が浮世絵的です。

6章 ルドン 夢の色彩

ルドンの『夜』より。
Ⅰ 老年に
Ⅱ 男は夜の風景の中で孤独だった
Ⅲ 堕天使はその時黒い翼を開いた
Ⅳ キマイラはあらゆるものを恐ろしそうに見つめた
Ⅴ 巫女たちは待っていた
Ⅵ そして探究者は限りない探究の途にあった

『夢想(わが友アルマン・グラヴォーの思い出のために)』
Ⅰ それは一枚の帳、ひとつの刻印であった
Ⅱ そして彼方には星の偶像、神格化
Ⅲ うつろいやすい光、無限に吊るされたひとつの頭
Ⅳ かげった翼の下で、黒い存在が激しく噛みついていた
Ⅴ 月下の巡礼
Ⅵ 日の光

‥詩人ですね。
翻訳の漢字とひらがなのポイントが絶妙で、柔らかくも妖しいかんじをしっかり掴んでいらっしゃいます。
作品はシュール。。

そして次の部屋に移動すると大きな花束の作品『グラン・ブーケ』が。

!!!

え、これが「あの」ルドンの作品??
ブルーが目立つこの色彩感は確かにルドンですが、シュール感は一切ない正統派作品。
食堂に飾る絵を依頼されたとの事。
確かに食堂にあの目玉とか頭だけとかはちょっとナンセンスですよね。

パステルは発色は確かにいいですが、どうしても粉が擦れてふわっとしてしまうイメージでしたが、その思い込みが一新されました。
キャンバスにパステルでこの迫力はすごい。
照明の効果もあってか、浮き上がって見えてきます。
多彩なルドン。

7章 ルノワールとモネの後半生

この頃のモネとピサロの色使い、筆致が似ていて見分けがつかない‥
ルノワールの有名な『ピクニック』があります。

8章 画商ヴォラールと画家たち 出版事業を中心に

セザンヌ、ルオー、ゴッホ、マティスなどで有名なヴォラール。
彼の敏腕ぶりはここでも発揮されていたのですね。

ここでもう一人の天才題名師ドニが登場します。
『アムール(愛)』より抜粋
・物腰は優しく清らかな
・朝のブーケ、悲しみ
・騎士は十字軍で死んではいない
・たそがれは古い絵画のような優しさを持つ
・彼女は夢よりも美しかった
・私たちの魂はゆっくりとした動作の中に
・人生の貴重な慎み深いものとなる
・けれどあまりにも高鳴る心

言い回しとか、ほんと言葉の勉強になります。
ヴェルレーヌの詩にボナールが挿絵をかいた『平行して』はレプリカがあり、手袋をして実際にページをめくることができます。

ルノワール、モネの鮮やかな印象派から、その同時代で独自の幻想世界を描き続けたルドン、アンニュイで退廃的なアールヌーヴォ期のロートレック‥とその当時のパリを感じる事ができました。

近代への眼差し 印象派と世紀末美術

三菱一号館美術館

2013年10月5日~2014年1月5日

入場料 一般 1200円

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